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愛人になる為の勉強と聞けば気が重い。しかしながら勉強以外に予定がないのだ。
瑠璃子は紅茶をひとくち含む。鷹司が淹れた紅茶は香りが飛び、渋みがあり、宝来の使用人が淹れる味には遠く及ばない。
「鷹司さんも損な役回りね。わたしなんかにあんな行為をしなければならないなんて。潔癖症なのでしょう?」
茶葉を台無しにした残念さが口調を尖らす。
「それが仕事ですから。瑠璃子ちゃんも不味かろうと美味しそうにするのが仕事ですよ。先に部屋で待ってますね」
鷹司は意に介さず告げると食堂を出ていった。朝食に瑠璃子の好物を用意したのは彼なりの配慮であったが、まるで汲み取って貰えない。
瑠璃子の方はお茶の味が気に入らなかったものの顔に出したつもりはなく、勘付かれた事に驚く。
そういえば鷹司は人をじっくり観察する所があり、機微をよく言い当てていたっけーーと思い返して頬へ手を添えた。
ともあれ、食べないと身体がもたない。
瑠璃子はサンドイッチを紅茶で流し込む。ちなみにサンドイッチはトマトが抜かれていた。
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