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「失礼します」
鷹司は応接室へ瑠璃子を通す。真新しい香りがする調度品等は新しい主の為に整えられたのかもしれない。
「先程も言いましたが、ここは君の家ですよ。ここで客をとり、生計を立てていくのですから好きに使って下さい」
と言って「はい、そうですか」と寛げるはずがなく、瑠璃子は着席を躊躇う。一方、鷹司は革のソファーへ背中を預けて長い足を優雅に組みかえる。
「何故、僕が対応するのか知りたそうですね?」
「えぇ、鷹司さん自らお出ましになるとは考えても無かったので。宝来の娘が薄汚い情婦に成り下がるのをご覧になりたかったとか?」
瑠璃子もあえて感情を押し殺した声音で返す。鷹司孝太郎、この男にだけは涙や弱さを見せたくなかった。地位や名誉、財産を彼に買い取られたものの、心は瑠璃子のもの。鷹司にだって買えやしない。
「君を薄汚いなんて思うはずありません。宝来家の借金を肩代わりしたのも幼馴染みのよしみです。最近はお会いできませんでしたが、今でも菫君と三人で遊んだ記憶は宝物ですよ」
「貴方は宝物の幼馴染みを売り飛ばすの?」
「それが生業なので。ですが、すぐに売ったりしませんので安心して下さい。これも幼馴染みのよしみです」
鷹司は切れ長な瞳を鋭く細め、カフスを唇で外す。
「さっそくですが、服を脱いでくれません? 瑠璃子ちゃんの裸を見せて下さい」
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