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6本めの指
私は、国境近くに小さな領地を持つマクスウェル男爵家にて、領主の末子として生を受けた。名をセスリーンという。
両親の愛情を一身に受けて育ち、恵まれた人生の始まりであった。物心ついた頃から学問にも芸事にも興味を持って励み、勤勉な娘だと、そこここで評価されていた。性根も真面目で素直だ、と悪くない評判だ。
ただ、それにはわけがある。私には齢一桁の頃から、そのような良い娘であろうと努める、奇異な理由があった。
「ねぇ、お母様。どうして私の足には指が6本あるの?」
「さぁ、どうしてでしょうね? 神様からのギフトかしら」
私の足には6本めの指がある。生まれつき、左足の小指の先に、6本めの指の頭が付いているのだ。
物心ついた頃の私に母は言った、それは神からの特別な贈り物だと。
子どもの頃は、幾分それを信じていたように思う。病とは違い、痛くも痒くもない。ただ余分なものがある、というだけだ。
だというのに、少し年を重ね、社交界へ出る頃のこと。私は足の形に沿った、タイトでスリムな靴が履けない、そのことを強く意識した。
そこでやっと、私は他の少女たちと違い、異端である、と感じたのだった。
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