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プロローグ
そこは野戦病院の裏庭。
月夜の晩に、シルクのワンピースをかぶった少女と、ひとりの入院患者が、ふたりでこっそり会っています。
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私はその年の夏、夜空の下で恋をした。
彼は片目の兵隊だった。
野戦病院を抜け出して、裏林を抜けたところに小川の流れることを知っていた私は、彼を誘うようにそこへ駆けていった。
ふたり岸辺にたたずみ、少しの時をやり過ごす。水面に映る細い月は静かに揺れ、心地よいせせらぎが聴こえる。
先に踏み出したのは、またも私。逸る心おさえきれずに靴を脱ぎ捨て、素足で前へ駆けだした。
それなのに早く捕まえて欲しくて、すぐに彼を振り向いていた。
彼は綺麗だ。斜めに巻かれる、包帯の上のプラチナの髪が、月の光に照らされ輝きを帯びる。
彼の片方だけの碧の瞳に、いつしか私は鋭く捉えられた。その獣のような美しさに、この胸はより高鳴る。
逞しい肩に寄り添いたくてたった今、思わず手を差し伸べた私は。
そこでつるりと滑ったのだ。
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