腐宅にようこそ

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腐宅にようこそ

 この家のどこかに人が埋められている。  ここの広い庭のどこかに人が埋まっているなんて、冗談だよね?  さあ? どうだろう。  父母に訊いても親戚の大人たちとともに微苦笑するだけで、否定も肯定もしなかった。  だからたぶん。  この家のどこかに。  誰かが埋まっているのだ。  小学生のわたしをみんなで怖がらせたこの家を、わたしの母親がもらった。相続人となった。  そんな家など相続せずに権利放棄すればいい。それが一番手っ取り早い。少しばかりの欲を出して負動産と言われて久しい田舎の土地と屋敷、不動産を相続するなど空き家の多いこのご時世では考えられない。やめておけ。  相続話を知った者は誰しもがご多分に漏れずそう言うだろう。今からでも遅くない。放棄手続きをしろと熱心に勧める。  実は、この家の本来の相続人はわたしのいとこである岩持(いわもち)(さとし)だ。  慧は一人っ子で、慧の両親も一人っ子同士であった。  その慧が親の遺産相続を放棄した。慧が受け継ぐはずの遺産相続権利は、法律が定める順番で、親族に打診されていった。  するとドミノ倒しのようにバタバタと親族たちは相続放棄をしていった。  家の敷地内に人が埋まっているという情報を皆が知っているからだ。  皆が放棄した遺産の後始末を、慧の伯母となるわたしの母が仕方なく背負うこととなった。 「慧さんの両親が一人っ子同士ってことは、二人とも兄姉が居ないんじゃない? ってか、わたしのお父さんとこの家の相続人だった慧さんとはいとこだって聞いているけど?」  それっておかしくない?  わたしの母の甥の子……である立場の岩持(つか)ちゃんが、真顔で訊いた。
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