ツナマヨ

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ツナマヨ

 池袋から夜行バスで約九時間。なんばパークス前の停留所に着いたバスが、ようやく長い旅を終えた。  ろくに眠れもしなかったせいか、頭はぼんやりとしている。久方ぶりに背負ったリュックは重く感じて、通路でふらりとよろめいた。  俺と同じようにどこか覚束ない足取りの者もいれば、姦しく降りていく女性グループもいた。  三者三様の乗客を吐き出したバスは、運転手と数人の乗客を残して走り出した。存外降りた者が少なかったのは、ほとんどのお目当てが次の行き先であるテーマパークだからだろう。  頭痛を誘発させる乗り物特有の臭いから解放され、外の空気を目一杯吸う。真夏日でも朝は清々しく、熱のこもった体に大阪の風は心地よかった。  帰ってきた、という気持ちにはならない。そもそも難波にはさほど縁もなかった。中学時代、遊ぶならもっぱら天王寺で、時々オタクの友人について日本橋に行くくらいだった。  梅田ほど複雑ではなく、洗練されてもいない煩雑な街。それが元大阪府民である俺が持つ、難波のイメージだ。  ハルはもっと好印象を抱いていた。活気と笑顔と人があふれる街だと、随分高い理想を。  宿泊ホテルはここから少し歩く。現在地から検索すると徒歩十五分はかかるらしい。とは言ってもチェックインの十五時までは十分な時間がある。  さてどうしようとぼんやり考えながら、特にあてもなく歩き始める。  時刻は午前八時三十二分。ハルと来るはずだった大阪の旅が、始まった。
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