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長男を送り出す
長兄の伯父は母より七歳年上で、戦争の末期、召集令状(いわゆる赤紙)が来て、出征した。
南方戦線に行くはずだったらしく、しかしもう戦争も末期だったので、四国か九州辺りまで行ったところで終戦になった。
伯父曰く「防空壕掘っているうちに終わった。もう少し早く召集されるか、長引いていたら、フィリピン辺りで死んでたんだろうな」と。
母の話だと、気丈に送り出したものの、その後祖父母は長男を取られた心労でふたりとも胃をやられ(多分胃潰瘍、消化器系の弱い家系)寝込んだそうだ。
母があり合わせの野菜とワカメのスープを毎日造り、それで直したそうだ。
伯父が出征した頃には、恐らく一般市民でも“もう日本は負ける”と薄々分かっていた頃なんじゃないだろうか。それなのに、長男を取られ残された妹弟はまだ小学生。形だけは「万歳」と送り出したものの、そのショックは大きかったのだろう。
因みに、我が家の長男は自衛官で、中卒で自衛隊の学校へ入った。広島の学校へ送り出した日のことは忘れられない。別に戦争に行ったわけではない。ただ、学校へ入るのに家を出ただけなのに、一年くらい心にぽっかり穴が開いたような空虚感があった。長男(初めての子)を家から送り出すということは、平和な今でさえ、親にとってはそれほど辛い。祖父母の心労は計り知れない。
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