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「純一、大丈夫?」
次の日の昼休み。いつものように三人でお昼ご飯を食べ終わると、純一の様子を見兼ねた湊が顔を覗いてきた。
「んー……」
純一はボーッとする頭で返事をする。
(さすがに身体がしんどい)
お尻はもちろん、身体のあらゆる所が痛い。あれから何回付き合わされたんだっけ、と数えてみた。
(三回? 四回? 覚えてないや)
「純一たちの仲を知ってるから言うけど……ちょっと無茶させ過ぎじゃないの?」
湊の声が鋭い。言われた司は純一の様子を見て、さすがに反省したのか「悪かった、止まらなかったんだ」と謝ってくる。
「うん、お前がかなりムッツリだって事は分かったし」
純一が力の入らない感じで苦笑すると、湊が「純一~」と呆れた声を上げた。
「しかも首とかいっぱい痕付けられてるし……痛々しくて見てられないよ」
「あー……うん、司噛みグセがあって……止めろって言っても聞かないから諦めたら……こうなった」
それを聞いた湊は耐えきれない様子で司を睨んだ。しかしそれを、純一が止める。
「ありがとな湊。俺も昨日散々怒ったし、反省してると思うから」
「……純一に言われたら仕方ないけど! 今度純一を同じ目にあわせたら、俺本気で奪いにいくからね」
「……そうならないよう、努力する」
「今の言葉、ちゃんと聞いたから」
またいつものように司と湊の間に火花が散る。しかし今回は、司の分が悪いようだ。
「純一……すまない」
「良いよもう。昨日散々謝ってもらったし」
え、と湊が意外そうに驚いた。
「司も謝るんだ……」
失礼な、と司は言うけど、表情は変わらないので、気を悪くしたのかも分からない。
純一は、その時の司の様子を思い出して、あれが見れただけでも良しとしよう、とこっそり笑った。
「純一に嫌われるのだけは、避けたいからな」
「……ふーん、つまり調子に乗ってやりすぎたって事ね。で、純一もある程度受け入れてたと」
湊はそう言って純一を見る。純一は「そうだね」とダルい身体で頷くと、彼は大きなため息をついた。
「あー! やってらんねぇ!」
湊は珍しく大声を出して立ち上がる。結局、俺の付け入る隙なんて無いじゃないか、とどこかへ行ってしまった。
「湊……っ」
純一は後を追いかけようとしたけども、力の入らない身体ではすぐに立ち上がれず、見送るだけになってしまった。
「放っておけ」
そう言われて純一は、眉を下げた。湊にフォローしても、逆効果だと言われ、心の中で湊に謝る。
すると司に肩を抱き寄せられ、頬にキスをされた。
「……辛いなら寝ていろ。時間が来たら起こしてやる」
「そうするー……」
純一は司に身体を預けた。
早くも一年の三分の一が終わった高校生活、俺には彼女ではなく、無口無表情ムッツリスケベの彼氏ができました。
(こんなはずじゃなかったのに……まあ、いっか)
純一は少しの間、眠りに落ちた。
[完]
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