発端

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発端

初めてにしては上出来ね? そう言い、冷徹な眼差しで彼を見遣った。 どうして? 君はそういう事でしか、答えを返してくれない。 僕はこんなにも、頑張っているのにさ?なんでよ? …知らないわ そう言い、ダンスホールのフロアから降り、ハイヒールの踵に踵を返して、彼女は暗がりに、沈んでいく。 どうしたというのだろう。僕1人、真っ暗な観客席に座り込んで、黙り込んでいた。 一体、どうしてこんな仕打ちをされたんだ? 思い出しても、自分には同性愛しか、無かった。 彼女は、そんな僕をどんな目で見ていたのだろう。 自分はそんなに愛する資格のないダメ人間かな…? 語りかける声はなく、静かなダンスホールのフロアにいた僕は、居た堪れなくなって、抜け出した。 僕は、男に生まれて来たことを後悔している。 男として、この世界に産み落とされた事を後悔している。 "女だったら良かったのに" 愛とは、哀しい幻の様にみえる。 "私を殺して欲しい"床に疼くまり、嗚咽に咽び泣く。 此処にいたかった、もっと激しい刺激的な、恋がしたかった。 ネェ、誰か!!! 私の心を買ってくれませんか… ね…… 静かに佇む時、全く別の意味でこの世界に愛想を尽かしている自分がいる。 誰にも愛されなかった私という人間は、こんなにも貧しいのだ。 心が折れてしまいそうだ。 煌びやかなステージでは、オンナ達が、淫らで悩ましげなポーズで男性客から、財布の紐を緩ませ、けつの毛の穴まで、毟り取り、搾取している。 今迄、僕は女しか見ていなかった。 オンナになりたいのだから。 そして、包容力の有る男性の腕に抱かれて、眠れない夜を救ってほしい 愛さえない夜にもう、負けたくなかったんだ。 愛してほしいんだ。
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