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〈夏⑥〉♡★★
「あっ、やぁ…っ」
恥ずかしがる樹の耳元で囁いた。
「綺麗だよ、樹」
「先輩…」
「全部、僕に見せてよ。でないと触れないだろ」
「ん…」
頬を染めた樹は、片手の甲を口元に当てて目を閉じた。もう片方の手と合わせて隠すように両膝を曲げ、素直に僕にジーンズを奪わせた。
恥じらいながらも、僕が触れるのを待ちわびている。そっと腰に手を回すと、僕を誘うかのように白い肌がびくんと動いた。
「ずるい…。先輩も、脱いで…」
震えた小さな声なのに、僕にねだる樹が可愛かった。
「わかったよ」
僕も全部脱ぐと、樹はうつ伏せになって僕の枕を抱えた。愛おしそうに頬を寄せる。
「泉先輩の、匂いがする…」
「…何か、恥ずかしいな」
「安心する。包まれてるみたい…」
右手にローションを馴染ませると、僕は樹の中に指を挿れた。
「あ…、んっ…」
初めてなのに、樹は僕の指をすんなりと受け入れた。それどころか、僕のぎこちない動きを樹は敏感に感じ取り、奥へと迎え入れる。
僕に体を委ねているせいか、指の数を増やしていっても痛がらないし、気持ちよさそうに目を閉じている。これ以上どんなふうにしたら樹が悦ぶのか、僕には見当がつかなかった。
「…もしかして、自分でもしたこと、ある?」
僕がそう尋ねると、樹は耳まで赤くなった。
「や…、聞かないで…」
答えたも同然の樹の可愛さに、僕は思わず口元が緩んだ。僕らの年頃で自分ですること自体は珍しい話じゃない。
それに、僕も女の子とは何度かしたことがある。もちろん、彼女たちの反応とは全然違うし、こっちは僕の知らない世界だったけど。
これが濡れている状態なのかどうかもわからなかったが、ローションのせいか抵抗がなかったので、樹に聞いてみた。
「…挿れてみても、いい?」
「うん…」
向かい合って僕がゆっくり入っていくと、樹は眉間に皺を寄せた。
深いため息をついて、僕の腕にしがみつく。
樹の中はひんやりとしていた。
自分がとても熱いせいか、その温度差が気持ちよかった。二人で呼吸を合わせ、僕は樹の様子を窺いながら彼の中に引き込まれていった。
すごい、全部入った…
「痛くない?」
樹は僕を見て微笑んだ。
樹の腰を少しだけ上げると、びくんと震えた。
「そこ、凄くいい…」
導くように囁いて僕に伝えた。
僕が奥まで届くと、樹の中で二人が繋がった感覚がはっきりとわかった。
僕はその体勢のままゆっくり腰を動かした。
樹は僕を離さないようにしっかり捉えて、動きに優しくついてくる。
「あ、あ…っ」
樹の指が僕の腕に食い込んだ。
声を上げ、悦んでいる樹はとても綺麗で、このまま腕の中に閉じ込めておきたいくらいだった。
汗が顎を伝って樹の胸元に落ちた。樹の体温も上がり、お互いの汗で抱きしめる手に力が入らない。樹の声と吐息が僕の耳に届くと、僕の体も一層熱くなる。
初めての快感に昂った樹は、泣きながら僕にしがみついた。
「せんぱ…っ、僕、おかしく、なっちゃう…っ」
樹の狂おしい声が、僕の理性を奪っていく。
「僕もだよ…」
樹の中は優しく僕を締め付けた。
繰り返す動きに、快感がじわじわと押し寄せてくる。
僕だけのものにしたい
誰にも渡さない…
頭の中が樹でいっぱいになった。
他のどんなことも、ここまで僕を満たしてくれたものはなかった。
樹の声を聞きながら、僕は彼の中に溶けていった。
家の浴室は1階にある。
僕たちは裸のまま、バスタオルと服を抱えてそっと部屋を出ると、その狭い空間に二人きりで閉じこもった。
シャワーの栓を捻って勢いよくお湯を出した。
「わっ」
まだ温まってない水が急にかかって、樹が笑った。
「気持ちいい」
前髪をかきあげて目を閉じ、しなやかに立ったままシャワーを頭から浴びている。
額から鼻先へ、唇から喉にかけてお湯が流れ落ちていく。柔らかい髪の毛が水を吸って、その先からも滴が伝い落ちる。ただそれだけのことなのに、その姿が身震いするほど美しくて、僕は思わず樹を抱きしめた。
「樹…。ダメだ。僕、自分を抑えられない」
「泉先輩…」
僕は樹を壁の方に向かせると、華奢な腰骨を掴んで後ろから樹の中に入った。
さっきと違う体勢のせいか、樹は鋭く息を吸い込み、絞り出すように声を上げた。樹を気遣う気持ちがなかったわけではないが、その声は僕を求めているように聞こえた。
壁についた樹の指先が白くなり、力が入っているのがわかる。それでも中は僕を優しく受け入れる。僕はそれに安心して、樹の奥まで入り込んだ。
僕は樹の首筋を噛むように唇を這わせ、樹は悩ましい声で応えた。
シャワーは僕の後ろから、二人を包むように流れ続けている。温かい水は僕たちの羞恥心と理性を残らず洗い流し、快楽だけを残していった。
このままずっと、樹を抱いていたかった。
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