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クリニック
洒落たデザインだが清楚さを強調した受付に、それとは真逆のナイスバディな女が座っている。
ここはけっこう人気ある心療内科クリニックなのだ。毎日大勢の患者がやってくる。世の中、心を病んでいる人間がこれほどいるというのはまさに驚きだ。
「どうされました?」
愛想よく受付の女が受診に来たやつらに問診票を渡している。あいつはサキュバスという淫魔で、俺の手下だ。
「前沢晴人さーん。診察室へどうぞー」
俺はここの院長だ。もちろんちゃんと医師免許も持っている。悪魔だって資格は大事だ。
「どうされました?」
「最近、寝つきが悪く、変な夢ばかり見るんです」
「どのような夢を見るんですか?」
「それが…朝になると忘れてしまうんです」
まあそうだろう。悪夢を見るんだろう?そいつはあのサキュバスのやつの仕業さ。そうしてその恐怖で味付けされた悪夢が、俺の大好物なのさ。
「心配いりません。よく効くお薬を出しておきます。お大事に」
さあこいつは今夜、どんな恐怖に彩られた夢を見るんだろう。
心を病んだ人間はどんどん増えていく。社会が病んでいるからだ。だからこそ、俺はこうして腹一杯、お前らの夢を貪り食えるのだ。
愚かな人間どもよ、これからも、おおいに病んでくれ。
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