魔王&ビーナス

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魔王&ビーナス

 横浜市中区の繁華街に関東テレビのあるビルが建っていた。 「カッカカッ、ここが関東テレビか。まるで箱庭のようなこじんまりとした大きさじゃ」  魔王は豪快に高笑いした。周りのサラリーマンらしき男性が白い目で魔王を見て通り過ぎていった。 「はァ、箱庭って、どんな大きさだよ」  娘のビーナスはそっぽを向いて聞き返した。 「まァ良い。吾輩が来たからには世界一のテレビ局にしてやろう」 「どんだけ上から目線なんだよ」  ビーナスはうつむいて額を押さえた。  その時、不意に背後から嘲るような笑い声が響いた。 「ケッケケ、なんだよ。おっさん。どこの(イタ)いコスプレイヤーだ。珍しいな。ハロウィンでもないのに魔王のコスプレかァ?」  パチパチと手を叩きながら少年が近づいてきた。 「はァ、誰じゃァ?」  魔王は眉をひそませて振り返った。 「ケッケケ、ご機嫌だな。おっさん。魔王のコスプレして()オチかァ?」  金髪の高校生くらいの少年だろうか。どちらかと言えば美少年の部類だろう。しかしヤケに貧相下劣な顔をして嘲笑(わら)っていた。 「はァ、なんじゃァ。お前はァ! ふざけた口をききおって、蝋人形にしてやろうか?」  魔王は上から見下(みくだ)したように少年を睨んだ。
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