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僕はミカエル ①
レオナルドが死に、僕が生き返ったと知ったサイモンは、連絡が届いたその日に馬を飛ばし、夜中にカトラレル家に来てくれた。
「ミカ!」
流行病から目覚めたとはいえ、まだ体調がよくない僕がベッドで横になっていたところに、サイモンが飛び込んできた。
「サイモンそんなに急いで、どうしたの?……わっ!」
僕の姿を見るとサイモンは大股で近づき、無言のまま僕を抱きしめる。
「ミカ、気づいてやれなくてごめん。来るのが遅くなってごめん!まさかこんなことになるなんて……」
僕を抱きしめる力が強くなる。
ーミカー
そうサイモンに呼ばれ、「本当はレオナルドだよ」と言いたいが言えず、胸がギュッと痛くなったけれど僕はミカ。ミカエルなんだ。
「ううん。急いで来てくれたんでしょ?ありがとう」
僕もサイモンの背中に腕を回すと、サイモンの体が一瞬固まった。
「ミカ……エル……?」
サイモンは僕から体を離すと、僕の顔をじっと覗き込む。
「どうしたの?」
僕が見つめ返すと、サイモンは黙り込んだ。
以前僕たち双子はよく服を交換し、入れ替えごっこをしていた。
母様は誰が見てもどっちがレオで、どっちがミカなのかすぐに分かるよう、レオのメインカラーを『紫』に、ミカのメインカラーを『青』と決めていてくれ、服や小物、僕たち後使うもの全てそのメインカラーを主に入れて作ってくれていた。
歳を重ねごとに似てくるようになった僕たちは、服を取り替えてしまえば父様と母様以外、ほとんどの人は見分けができなくなっていた。
それはサイモンも例外ではなくて。
あの時と同じ。あのイタズラと同じようにしていたらいいんだ。
僕はサイモンを見つめ返し、また抱きつく。
ミカなら、きっとそうするはず。
そんな僕をサイモンは強く抱きしめ、頭を優しく撫でる。
「お別れはできた?」
「……できたよ。ちゃんとできた……。最後のお別れに来てくれたんだ。さよならは言えなかったけど、おやすみなさいは言えたよ。大好きだって言えた」
あの時の僕達を思い出すと、涙が溢れてきそうになる。
君は僕の元に会いに来てくれた。
たとえそれが現実でのさよならじゃなくても、ちゃんと僕の心の中では残ってる。
大切な君の掌の感触も体温も。
泣いてばかりはいられない。
笑顔でさよならしてくれたのは、きっと僕が悲しくて泣いてばかりの毎日にならないようにでしょ?
だから僕は泣かないよ。
「元気になったら僕、レオが寂しくならないように、毎日お花を届けるんだ。それで僕がいなくなっても寂しくないように、毎日花を持って行って欲しいと父様と母様にお願いしてるんだ」
「いなくなる?」
「うん。だって僕が18歳になったら、僕達結婚するんでしょ?」
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