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プロローグ
「母様、テストで満点取ったんです!」
僕が母様の前に満点のテスト用紙をだしても、
「そう。それより氷を持ってきてちょうだい。可哀想に、ミカエルがまた熱を出してしまったのよ」
そう言って母様は僕の方すら見ずに、忙しそうにミカエルの部屋に向かう。
「父様、乗馬大会で一位だったんです」
僕が騎馬大会の表彰状を出しても、
「そうか。そんなことよりレオナルド。医者を呼んできてくれ。ミカエルが咳をしはじめたそうでな。今回は拗らさなければいいが……」
そう言って父様も僕を見ることなく、大股で僕の傍をすり抜けて、ミカエルの元へ急ぐ。
ぽつんと廊下に残された僕の傍を、慌ただしく使用人たちも通り過ぎて行く。
僕は他の誰の目にも映らない。
まるで透明人間。ただの空気と同じだ。
父様、母様。
僕はただ「よく頑張ったね」と、頭を撫でてほしかっただけなんです。
他には何も望みません。
僕は父様と母様に、僕という存在を見て欲しかったんです。
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