怒りの宗教

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 目が覚めた時には、すでに周囲はすっかり明るくなっていた。  明るくなってから周囲を確認すると、あの奇妙な宗教施設は跡形もなくなっていた。その場所にあったのはより大きな商業施設で、ただ営業時間外には施錠されていたというだけだった。モーテルに入るには反対側の入り口から入らなければならないということだったらしい。  その眠ったような集落を過ぎて私は旅を続けたのだが、その夜のやりとりに関する記憶はどこか、脳の記憶領域の小さな一部にずっと引っかかっている。  私が見たものが何だったのか、私には分からない。  それが単なる私の夢、妄想だったのか。それとも、どこかの本で見た哲学問答が、私の意識に影響を与えたのか。それともあの地に住まう悪魔が、夢の形で私に接触してきたのか。あの怒りの宗教が、この世界のどこかに、実際に存在しているのか。 (了)
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