怒りの宗教

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怒りの宗教

 私がそのドライブインで一夜を明かすことになったのは、二十代の終わりの頃のことだった。  そこに辿り着いた理由は込み入っているが、あまり大した理由ではない。  失業し、失望した私だったが、当座の目的も見つからず、だからと言って絶望から自分を傷つける思考に嵌まり込むほどその仕事に思い入れてもいなかった。私は、中古車で大陸を横断し、西海岸へと旅行する計画を立てたのだった。その途中での出来事だ。  当てのない旅だから、宿を取っているわけでもなく、その当てを付けているわけでもなかった。スマートフォンでの検索技術が発達した現代ではこうはいかないかもしれないが、私の旅は、行けるところまで旅して、夕方以降に見つけたモーテルに宿泊するという旅だったのだ。  だがその夜は、手頃なモーテルが見つからなかった。それどころか、行けども行けども文明の証拠らしきものは見つからず、既に真夜中近くなって、荒地を走る道路の傍にやっとそのネオンサインを見つけたのだ。  DRIVE IN 24h OPEN  矢印の下にそれだけが書かれたネオンサインだけが、暗闇に浮かび上がっていた。  誘蛾灯に引き寄せられる蛾のように、私はそのネオンサインが示す矢印に、魔術的に引き寄せられて従ったのだった。
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