怒りの宗教

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「……ありがとう」  そう言って小銭をトレイに置いた私に、しかしレジ係の娘は、目を伏せて答えることはなかった。 「…………」  日焼けした肌に、日焼けした金髪を後ろで一つに束ねた若い女で、眠そうに目を伏せていた。太っているわけではなく、骨格の上に薄く肉が張ったような、そんな顔立ちで、どこかしら全てに無関心に見えた。  ドライブインは、私の期待したようなものではなかった。小さな売店にスナックが少々、それから飲み物が少々置かれているだけで、落ち着いて座って注文できるようなレストランではない。置かれている読み物の類は、私の興味を引かない地方紙と、これまた興味を引かない宗教のパンフレットぐらいだった。かろうじて売店に隣接した休憩室があり、ベンチが並べられていたが、ベンチは見るからに硬そうで、居心地が良さそうではない。  もしかしてこのベンチで一夜を過ごすのだろうかと、私は少々不安になる。もしここが大きな空港であれば、犯罪の起きる心配はあまりなく、そういった場所ではベンチで一夜を明かしている人は見かける。だがこんな人気のないドライブインであれば保証は出来ない。この場では万事に関心がなさそうな店番の娘に信頼を置くぐらいしかできそうになかった。  それとも、もしかしたら宿泊施設はあるのかもしれない。私の関心は、休憩室を挟んで売店と反対側の施設に向かう。外から見た限りでは、それなりの大きさの建物があるようだったが、それ以上のことは分からなかった。なので私は、そちらに向かう扉へと向かって歩いていったのだった。
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