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 これからエストーラが都の刑務所に戻されることをエジームに聞かされて、僕は彼に質問した。 「彼女をもう一度、ここに連れてきていただくことはできますか? できれば彼女に町の案内を頼みたいのですが」  バードがエストーラに興味を持っている。"彼"はエストーラの心に揺れる何かに惹きつけられているのだ。  ひょっとしたら、闇雲に町を歩き回って新しく出会う誰かを探し回る手間が省けるかもしれない。  僕が具体的な望みを口にしたことで、老人は却ってほっとしたらしい。しかも、彼の最初の思惑通り他の犠牲者を出さずに済むかもしれないと考えているようだった。  彼は安堵の表情を浮かべ、おっしゃるとおりにいたします、と答えた。 「もしもご所望なら、エストーラをここに住まわせて、身辺のお世話をするように取り計らいますが」  少し考えて、僕はエジームの申し出を受けることにした。  明らかに彼女は、生贄の祭壇で死を賜り損ねたことに落胆していた。静かに時を待つ彼女の中に仄見えていたのは覚悟と決意。  だから他の誰かがこの屋敷にやってくるよりは気が楽かもしれない。少なくとも僕を神殿まで迎えに来た一行の中で、一番おびえていなかったのはエストーラだった。
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