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Thu.
翌日、朝は別の警備員が立っていた。3人とも、一日中ソワソワしながら授業を受け、部活中は時計ばかりを見て過ごした。
昨日と同じ様に、部活終わりの第一陣が帰るのを待った。薄暗い通学路を3人で歩く。
「どう?見える?」
「…いる。いたいた‼︎出口‼︎」
「ヤバーい。緊張してきた」
速度を落としたり立ち止まったりしながら一番手を押し付け合う。
結局一番前になった貴美。その後ろによっちん、鈴子が続く。
「どうぞー」
から4m。
「今日もごめんねー」
3人の動きがシンクロして一斉にイケメンに顔を向ける。
「あ、あの…ここの工事はいつまでなのですか?」
貴美が予定通りに質問をした。
「あ、えーっと来週の水曜日…16日までだよ」
「おっ、おおぉ…お兄さんはこの時間毎日ここに来るですか?」
貴美に続き、よっちんが質問をする。
「あ、警備?来るよ。よろしくねー」
「…」
全員の視線が鈴子に集まる。
「んはッ」
彼が吹き出した。光を放っているかの様な笑顔で、固まっている鈴子に向かって逆に質問をしてきた。
「何年生?」
「中2です‼︎」
鈴子が裏返った大声で答える。
「中はいらんでしょ⁈」
よっちんがすかさずツッコミを入れる。
「部活の帰りかな?何部なの?」
「テニス部をやっています‼︎」
イレギュラーな事態にテンパるよっちん。
「あ、あの…名前を聞いてもいいですか?」
貴美が鈴子の代わりに質問する。
「え?俺?小池です」
「小池さんですか」
「小池ですけど…」
「小池さんだそうだよ」
貴美が鈴子とよっちんに報告する。
「んはッ」
小池さんはまた吹き出した。
「何歳ですか?」
「26だよ」
鈴子のアドリブ質問にも快く答えてくれた。貴美もそれに続く。
「また明日、話しかけてもいいですか?」
「この時間だったら多分大丈夫だよー」
「はい‼︎じゃあ明日、話しかけます‼︎」
「じゃあ、名前を教えてもらっとこうかな?」
「貴美です」
「あ、鈴子です」
「よ…美樹です」
「よっちん、何名前言ってんの⁈」
「いぃじゃん別に」
「あー…ヤバ。ウケる」
「ほら、笑われてんじゃん‼︎」
「えっと、貴美ちゃんと、鈴子ちゃんと…」
「美樹です‼︎」
「あの、私…鈴木綾子です‼︎」
「えー…貴美ちゃん、綾子ちゃん、美樹ちゃんでいい?」
「鈴子まで名前言っちゃってー」
「いぃじゃん別に」
「…あ、車が来るからこっち避けて」
包み込む様に庇う小池さんの右腕に3人の女子が恋に落ちた。
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