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鬼、遭遇
鬱蒼とした森の中でギャオギャオと鳴くのは鳥の鳴き声? それとも鳥は鳥でも鬼鳥の鳴き声だろうか?
日が差さず年中ぬかるんでいる地面を強く踏みしめて森の奥へと進む。
「うわぁー! 鬼じゃ、鬼が出たぞ~!!」
「ひぃ~!! 恐ろしや~!」
前方から聞こえてくる悲鳴は我らがイザヨイの里が誇る鬼学者の爺さま達のものだ。
両の腰へと携えた刀を引き抜きぼくはタッと駆け出す。
「鬼め、討鬼師・星が相手をしてやるぞ!」
腰を抜かしている爺さま達を庇うように踊り出で双刀を鬼に向ける。
鬼、ぼくら人間に害をなす異形の化け物。それを討伐するのが討鬼師であるぼくの役目だ。
「てやああああ!!」
一丈ほどの巨体に太い腕、禍々しい角を頭へ二本生やして鋭い牙と爪を光らせる醜い生き物へと斬りかかって行く──が
「きゃん!」
足を滑らしてすっ転び、湿った土へ顔から飛び込んでしまう。
「……い、いたい、」
鼻の頭を擦りながらよろよろと立ち上がる。お気に入りの青い戦装束汚れて──じゃなくて!!
ハッとして目の前の鬼を見上げると、鬼は獲物を前にしてギラギラと目を輝かせていた。
「ウォオォオォオォ!!」
「じ、爺さま達! 早く逃げて!」
ビリビリと空気を振動させる程の鬼の咆哮に怖じ気つき、ガタガタと震えながらも必死に双刀を構える。
鬼は高く上げた腕をぼくに向かって振り下ろす。足が竦んで動かない、受け止めるしかないと覚悟を決めたその時……、
ふわりと月下香の甘くも爽やかな匂いが香った
次の瞬間、鬼は体中から血飛沫を上げ悲鳴もなく倒れ……そして動かなくなってしまった。
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