温泉

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温泉

 月音センパイを見送ってから本部内にある大浴場へと向かう。傷や疲労の回復によく効く温泉で里の皆が重宝している。  洗い場で体の泥を落としてから温泉へと入る。温かなお湯を独り占めしながらホッと息をつくと、右の足首が痛む。  足を滑らせて時に挫いてしまい、かっこ悪くて黙っていたのにセンパイにはバレていたみたいだ。こんな有様ではいくら走ってもセンパイには追いつけないじゃないか! 「しっかりしなきゃ!」  両手で救ったお湯をバシャリと顔にかけた、その時だった。 「新米のお嬢ちゃんは威勢がいいねぇ」  (にわか)が響いて顔を上げると、金色の長い髪をアップにした褐色碧眼の討鬼師・(スバル)さんが腰に手拭いを巻いて立っていた。 「あわわっ!」  慌てて体を隠すも、昴さんはケラケラと笑いながらぼくの隣へと座る。 「大丈夫だって、俺は子どもには興味ないからさ。それよりも月音は? 一緒の任務だったんだろう?」  昴さんは腕の立つ槍使いなのだが、基本的にチャラチャラとしていて里中の女性に声をかけている軟派な人だ。特に月音センパイへ粉をかけているがいつもあしらわれている。……ぼくはセンパイにしつこく迫るこの男が大嫌いだ。 「月音センパイは護衛任務でアカツキの里へと行きましたよ」  そっけなく言うと昴さんはヒュ~と口笛を吹く。 「相変わらず仕事熱心なこって。帰って来たら俺が癒してやらないとな」  心の中で昴さんにベーっと舌を出す。さっさと上がって足のテーピングでもしよう。 「あれ? そういえばアカツキの里って星ちゃんの故郷だったよな?」  立ち上がろうとしたまさにその瞬間に訊ねられ、ぼくは出ていくタイミングを逃してしまうのだった。
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