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故郷
「そうです、ぼくの故郷です」
「……あー、それはなんというか気の毒だったね」
気の毒とは、つまり3年前のことだろう。
3年前、ぼくはアカツキの里で暮らしていたのだが、ある日の夜に突然里へ鬼共が攻めてきた。里を守る結界が何故だか作用せず、里にいた討鬼師達も不意を突かれたとあってアカツキの里は壊滅寸前であった。
両親と妹は鬼に殺され、ぼくの命もあわや失われるという所で鬼を切り裂いてくれたのがイザヨイの里から駆けつけてくれた月音センパイだった。
増援のおかげで里を襲う鬼共は殲滅され里は滅亡を免れた。だけど、ぼくの心には鬼に対する激しい憎しみが生じた。だから月音センパイに「弟子にしてくれ」と頭を下げたのだ。
でもセンパイは決して頭を縦に振らなかった。鬼と戦うのは危険だと言って相手にしてくれなかったのだが、諦めなかった。
毎日毎日センパイを追いかけて必死に自分の思いを伝えて、気がつけばイザヨイの里まで月音センパイを追いかけてきていた。
センパイはため息をつきながら討鬼師の養成所へぼくを紹介してくれたのだ。それから3年後、ぼくは討鬼師としてデビューした。
「……こんなことを言ったら不謹慎かもだけどさ、」
昴さんが前髪を掻き上げながらそんな前置きをする。
「俺は君がこの里に来てくれて、月音と一緒にいてくれてよかったと思う。……月音、君と一緒にいるようになってから命を削る様な無茶な戦い方をしなくなったからさ」
月音センパイの戦い方は圧倒的な強さと余裕、そして優美さを併せ持つ素晴らしいもので“無茶”だなんて言葉は程遠い。
前に夜空姉さんがセンパイと昴さんは幼馴染みだと言っていたが、昴さんはセンパイのことぼくよりも全然知らないじゃないか。
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