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結界の要石
捻挫が完治するまで里の外へ出る任務を禁じられ、今日もまるで子どものつかいの様な任務を夜空姉さんから告げられる。
「今日星ちゃんにお願いしたいことは祠に異変がないかの確認で~す」
「鬼の討伐に行かせて下さい! 川の近くに小鬼が出たんですよね? ぼくが行きます!」
「あらー、残念。ついさっき昴くんが行っちゃったのよ」
月音センパイに言い寄るだけじゃなくてぼくの活躍の場まで奪うだなんて!
仕方なくぼくは里の四方に設置してある祠の様子を伺いに向かう。
祠には巫女様が力を注いだ石が祀られており、この石こそ里を守る結界の要石なのだ。これに異変があると、里へ鬼の侵入を許してしまうことになる。
入念に祠の様子を確認する、結界が作用しなかった時の恐ろしさはよく知っているから。
本部へと戻る前に里の出入口へとやってくる。
センパイは護衛任務から未だ戻っていないのだが、イザヨイの里とアカツキの里の往復を考えると今日あたり戻ってきてもいいだろう。
早く帰ってこないかな~とわくわくしていると、遠くにセンパイの姿が見える。里を出た時とは違う行商人を連れている様だ。
「月音センパ~イ!」
大きな声で名前を呼びながら手を振ると、センパイは周りの目を気にしつつも照れくさそうに手を振り返してくれた。
里の中へと入るとセンパイはぼくの頭を撫でてくれる。
「ただいま、星。お出迎えありがとう、星にとても会いたかったから嬉しいわ」
「えへ、えへへ!」
「足もよくなったみたいね。怪我はちゃんと治すこと、無茶な戦いはしないこと。いいわね?」
「はい! センパイ、報告が終わったら一緒に温泉に入りましょう!」
「いい返事なのだけど、本当に分かっているのかしら?」
クスクスと困った様に笑うセンパイの手を引いてぼくは本部へと歩き出した。
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