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里長会談
3年に1度、国中の里長が集まり鬼の被害や対策を話し合う場が設けられる。
会談の場は各里の持ち回りで、今回はイザヨイの里からほど近いセイゲツの里で行われる。
イザヨイの里の里長であられる花月さまは32歳とまだ年若い男性でありながら、討鬼師達の最高管理者も兼任されている。
1本の三つ編みにした白銀の髪、大きな丸眼鏡、そして麗しい顔立ちの花月さまはとても聡明で、里の住民達のことを一番に考える慈悲深いお方だ。
「此度の里長会談、月音さんには僕が不在にする里を守っていてほしい」
花月さまのとても優しい声色で紡がれた言葉に月音センパイは僅かに首を傾げる。
今、花月さまの執務室には里の主だった討鬼師達が集められている。
「不肖ながらわたくしは同行して花月さまの御身をお守り致しとうございます」
月音センパイの言う通り、セイゲツの里までの道中に鬼からの襲撃があるかもしれない。里で一番偉い花月さまを里で一番強いセンパイが守るのは当然だと思うのだが……。
「僕と月音さんが同時に里を不在にすれば住人達はひどく不安になるだろう。僕は昴くん達に守ってもらうから、君は里を守ってほしい。僕が里を任せられるのは君だけだからね」
成る程、それも道理だ。センパイは暫く口を噤んでいたが、ゆっくりと頭を下げる。
「はい、承りました」
さすがは月音センパイ! 花月さまに頼られていてスゴいな!
「星さん」
「は、はい!」
初めて花月さまに名前を呼ばれて心臓が跳ねる。
「君にも僕を守ってほしい。初めての長期任務になるが、大丈夫かな?」
そんな大役が務まるのだろうかと怯えていると、後ろに立つ昴さんがボソリと言う。
「新人の通過儀礼みたいなもんだ。俺達もいる、もっと気楽に考えろ」
つまりはセンパイも通った道。ならば今はまだセンパイを追いかける身であるぼくの答えは決まっている。
「はい! うけたままりました!」
大切な所で噛んでしまったけど、花月さまが笑っているからセーフだ!
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