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太陽を追って、走り続けている男がいた。
人々は彼を「イカれてる」とか「バカだ」とか、好き勝手に噂した。俺もそのひとりだ。
決して手の届かない太陽を追うなんて、どうかしてる。
理解など到底できない。
だが、中には物好きなやつもいて、一部で彼は「かっこいい」と崇拝されている。そこがまた気に食わなかった。
秋暑の午後。体が重だるい。
気晴らしに海沿いをドライブしていたら、例の太陽を追う男を見つけてしまった。
「無駄なことをしているね」
俺は車の窓を開けて、男に言った。
「太陽は空にあるんだ。地上をいくら駆けたって、触れることはできないよ」
男はまっすぐ太陽を見据えたまま、足を止めずに返答した。
「俺はただ、夜がこわいから太陽を追って、必死に走っているんだ」
なるほど、まったく理解できない。
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