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腕を掴まれてがっしりした肩に載せられた。足のもつれそうな僕を支えてくれる。部屋に入るとそっとベッドに寝せてくれた。
ずっと車に乗っていたせいか、体が揺れてるような気がする。
「すみません」
「いいんだ。それより休め。ちょっと頭の傷を見てやる」
病院の手当てで充分かと思ってた。自然に乾かした方が傷の治りが早いとも言われたし。
「原因はこれだな。炎症起こしてる。あのヤブ医者、どこを見てやがったんだ」
ガサゴソ音がする。
「口を開けろ。抗生剤と解熱剤だ。これくらい病院でも出してくれりゃいいのに」
「なんでそんなもん」
「旅するならある程度の薬は持ってるさ。シャワー浴びて来る。眠れるなら寝た方がいい」
シャワーを浴びに行くベンを見送る。あんなに車でも寝てるのにまだこんなに眠いなんて。そう思いながらも僕の瞼は塞がって行った……
――追いかけてくる……
『待ちやがれ!』
――声が追いかけてくる…… 足元に銃声
「おい! 大丈夫か!? ルディ!」
たった今走ってるみたいだ、息が荒くてバクバクする心臓。
「ひどい汗だ、脱げるか?」
やっとの思いでシャツを脱ぐとベンが絞ってきたタオルで背中や肩を拭いてくれた。バッグから僕が着てたのよりちっとはマシなシャツを出してくれた。
「かなりうなされてた。悪い夢でも見たか?」
「銃声が……追っかけられて銃で撃たれて……」
「安心しろ、どこにもそんな傷は無いんだから。またあの男か?」
「1人じゃなかった……2人だった…… 僕、何したんだろう……何で追われてたんだろう。ベン、やっぱり僕は犯罪者なのかもしれない」
体が震えてくる。ベンは僕をシーツでくるんでくれた。
「考え過ぎだ。それが本物の記憶かどうかも分からないのに」
走った土の間隔と草の匂いが蘇る。
(あの夢はきっと本物だ…… 僕はいったいなにをしたんだろう)
あの恐怖が心を揺さぶってくる。
「こうしててやる。寝るんだ、また悪い夢を見たら起こしてやるから」
がっしりした手が僕の手を握ってくれて、波打ってた心臓が嘘のように落ち着いていく。この手……知ってるような……
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