二人旅

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   目が覚めると外は明るくなり始めていた。  横を見る。しっかりと握った手はそのままに、ベンは椅子に座ったままベッドに頭を預けていた。疲れただろうに。  上着をかけてやりたいけどそしたらベンを起こしてしまう。僕は天井を見て、また外に目をやった。静かな朝だ。白い雲の間にところどころ青い空が見える。今日も道路は熱いんだろうか。ずい分長いこと歩いたもんだ。  ベンが身じろいだ。 「なんだ、起きてたのか?」 「おはよう、ベン」  じっと僕を見るその目が柔らかくなっていく。 「ああ、おはよう、ルディ」 「うん」 「オレゴンに向かうところだ。途中のこと、覚えてるか?」 「覚えてるよ。ベン、驚くくらい優しかった。ありがとう」 「まだ熱があるな。手が熱い」  慌てて握っていたままの手を離した。ベンがクスッと笑う。 「子どもの頃はこうやって手を握ってやったんだ、お前が眠れないとさ」 「そうだったね」  立ち上がって伸びをするベンに疲れが見える。 「ティムとレイシーだった」 「ああ、聞いた。あいつらがお前を追い回したってな。きっとそれで川に落ちたんだろう」  ここにいるいきさつを話してくれた。 「あいつら、他の連中にも声かけて消えたお前を探し回ってたのさ。話を聞いてすぐ連中のところに行ったよ。相当脅してやった。探し回った探したよ、お前のこと」  その声が冷たい。思わず『殺さなかっただろうね?』と聞きたくなった。ベンならやりかねない。 「諦めかけた時にお前を見つけた。けど俺のこと分かっちゃいないし、俺がやった腕時計を俺に差し出すし」  思い出して可笑しくなった。 「もうちょっとのんびりさせてやりたかったよ。お前記憶無くして幸せそうだった。素直だったしな」 「兄貴もね。すごく優しくて『いい人』だったよ」  レストランでのことを思い出して口元が緩む。違う人みたいだった。  あんなに大喧嘩したのに。ずっと僕を探してくれて、僕の記憶が戻るのをマザーロードを走りながらも無理をせずに待ってくれた。 「もうしばらくここにいよう。せめてお前の熱が下がるまでは」  いつだってベンは僕のことをこうやって見守ってくれる。それを思い出した。  
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