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①では、表現を変えながら似た言葉を繰り返すことで語彙力があるように見せかけられるよ! という話をしました。
これには、驚きなどの感情をなんとなく強調出来る……というメリットもあります。
これも拙作から引用してみます。
○
深紅の虹彩の中に、瞳孔が底無しのクレバスのように縦に走っている。
初めて誰かと目を合わせて話した。
機嫌を伺うために盗み見ていた親たちの濁った瞳、
島民たちが楼夫を見下す冷めた眼、
そして真祈が楼夫に向けるおぞましいほど無邪気な眼とは違う、
宵闇のように穏やかで暖かな眼差し。
○
楼夫という人物の目線で、深夜美という人物と出会った時の驚きを書いている場面です。
この深夜美というキャラクターは、赤い瞳が特徴です。
さらに楼夫はコミュニケーション能力が低く、深夜美と出会うまでは人と目を合わせて喋ることが出来ませんでした。
これらの理由から、目を強調したシーンになっています。
目を表現する語句だけでも、「虹彩」と「瞳孔」、「瞳」「眼」「眼差し」などの言い換えをしていますね。
もしここで「目」を連発していては、もっと下手な文章に見えたことかと思います。
仮に、同じ語句を連発することを避けたいからと言って、
○
この時楼夫は、初めて誰かと目を合わせて話した。
○
……だけで済ませてしまうと、上記と比べると楼夫が受けた衝撃が薄く見えるのではないでしょうか。
シリアスな場面なのに絶望感が出ない……という時は、
このように表現を少しずつ変えながら、
くどくならない程度に繰り返してみると、登場人物の感情を地の文で見せることが出来るのではないか……と考えてやっています。
しかし、何事にも例外というものはあります。
人名などの固有名詞は、どんどん連発してしまって良いと思います。
同じ表現を繰り返したくないがために代名詞を多用して、ストーリーを追うことを困難にさせるよりは、
固有名詞と動詞や形容詞などの関係をはっきりさせた方が、
読み手さんにとって親切な文章になるはずです。
以上、私が個人的に心がけて使っている小技を書いてみました。
私より文章の上手い方なんて創作界隈にはたくさんいらっしゃるので、
必要無いよ! そんなこと分かってるよ! と思われるかもしれませんが……
それでも、誰かの役に立てれば幸いだな~と思って発表させていただきました。
次回は、「類語辞典を見ても類語が見つからなかった場合の対策」を書いてみたいと思います。
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