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赤井は渋面を私に向けると、フンと鼻を鳴らしてソファーに座りそっぽを向いた。
不満はあるけどもう口にするのはやめた、と態度に現れている。
赤井の様子を見て満足げに笑みを深めた田神さんは私と愛良に向き直った。
「聖良さんもついでに転入できるようにしよう。だから愛良さん、転入の話を受け入れてくれるかな?」
無理です!
とは言えない。
一緒になら良いと言ってしまった手前、ハッキリとは断れない。
私は無表情のまま、内心かなり焦りながら考えた。
どうしよう。どういう理由を出せば断れる?
必死に頭を回転させるけれど良い案は一つも浮かばない。
それでも諦めずに考えていると、愛良が口を開いた。
「え? 本当にお姉ちゃんも一緒に行けるんですか?」
……ん?
断りの言葉を口にすると思ったのに何だかおかしい。
「ああ、約束しよう」
「それなら良いです。転校します」
愛良の言葉が信じられなくて二拍ほど沈黙。
そして――。
「っえええぇぇぇ!?」
私は今度は一人で叫ぶ羽目になった。
隣の愛良が耳を押さえ、お母さんが「うるさい」と呟くのが見えたけどそんなの今はどうでもいい。
私は愛良の両肩を掴み正面から彼女を見た。
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