その手を取って向かうのは

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 そんな私を間近で見ていた岸は思わずといった様子で噴き出す。 「っぷはっ! 聖良、お前分かりやすすぎっ」  そうやって笑った岸の表情は見たことのないような普通の笑顔で……。  でも、だからこそ見惚れてしまった。 「……おい」  また二人の世界に入ってしまいそうだった雰囲気に、周囲を取り囲んでいた男達の一人がうんざりといった様子で声をかけてくる。 「目的の女が手に入ったならさっさと行くぞ。あっちの方も、そろそろ事が済んでいるはずだ」  その言葉に私もハッとする。  “あっちの方”って、愛良のこと? 「ああ、そうだな。……行くぞ、聖良」  岸は笑いを引っ込め、そう言うと私の手を引いた。  私はそれを少し引き留め、後ろを振り返る。  俊君、嘉輪、正輝君。  三人はそろって複雑な顔をしていた。 「みんな、ごめんなさい」  何も言わずに行ってしまうことは出来なくて、謝罪の言葉を口にする。  すると、代表するように嘉輪が口を開いた。 「いいの。聖良が幸せになれる選択をして」  その私を思う言葉にまた泣きたくなってくる。  でも、今はそれより頼みたいことがあった。  私はみんなの手を離し去って行くのに、都合が良すぎるかもしれない。  でも、やっぱりこれだけはお願いしないわけにはいかなかった。 「ありがとう、嘉輪」  お礼を言って、そして願いを口にした。 「愛良を……お願い」 「もちろんよ」  笑顔で答えてくれた嘉輪は、次の瞬間カバンだけを残して消える。  誰よりも私の願いを優先してくれる大好きな親友は、早速向かってくれたらしい。 「っな⁉ 余計なことを! さっさと行くぞ!」  でも男達が少し慌てた様子になり、私と岸を急かした。
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