主従の契約

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「それは単純明快よ。岸が邪魔なの」 「は?」 「どうなるか分からないと言っても、聖良の血が特別なことに変わりはないわ。上層部の吸血鬼は身内をあてがいたいし、ハンター側もほとんどがそんな特別な聖良に素行の悪い岸は釣り合わないと考えてる」 「はぁ⁉」  その説明には、流石に怒りが勝った。  好きになったり結婚する相手を何で第三者に決められなきゃないの⁉  愛良に五人の中から選べと言って来た時もどうかと思ったけれど、今回もまさにそれだ。  愛良はその中に想い合える相手を見つけることが出来たからまだ良かった。  でも、私の場合はその想い合う相手を引き離したうえで誰かをあてがわれるってこと?  冗談じゃない! 「そんな理由で引き離そうとするなんて……」  愛良はそこまで口にはしたけどショックで続きが言えないようだった。  私はあまりにもな話に怒りで声が出ない。 「そうね。だからこそ私はなおさら聖良達を引き離したくないのだけど」  嘉輪の声にも幾分怒りが見え隠れする。  でも、逃げるための具体的な言葉がないことでどうやって逃げればいいのかは嘉輪にも分からないんだと知った。 「……とにかく、逃げるためのチャンスを見逃さない様にしましょう」 「うん」  私は頷いて、前を見る。  諦めない。  諦められない想いだから。  だから、絶対に逃げ切ろう。  もうすぐ会える私の“唯一”に向かって、心の中で語り掛けた。 ***  連れて来られたのはいつもの会議室。  見届ける為か見張りの為か、いつもより人が多い気がした。  田神先生や零士、婚約者候補の五人。  あとは何故か鬼塚先輩や弓月先輩といったH生もいた。  それ以外にも大人の人が数人。  この人達を振り切って逃げられるかな?  逃げると決意したけれど、流石に不安が頭をもたげる。  でも、そんな不安も何もかもが、一人の姿を捉えた瞬間に吹き飛んだ。 「聖良っ!」 「っ岸!」  支えてくれている二人から離れて、ただ一人を求めて足を進める。  でもまともに歩けない私は数歩でふらついてしまって……。 「聖良っ」  同じく駆け寄ってきてくれた岸が支えてくれた。  その腕につかまり彼の様子を見る。
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