主従の契約

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「主従の儀式か……」  田神先生が悔し気に呟く。  そうだ。  ハンターが無理矢理奪って飲み込んだという隷属の儀式とは違うから、主従の儀式ってことになる。  私が主で、永人が従う側。 「でも、何でそんなこと……」  やっと息も整って来て疑問を口にする。  今それをする意味があるんだろうか?  私の疑問に永人は腹が立つほど得意げな顔で答えた。 「血の結晶にまつわる儀式は吸血鬼にとって本当に特別なんだよ。血の結晶は作り出した吸血鬼、本人そのものと言って良い。それが主の体の中にある。つまりは、引き離すことは絶対に出来ねぇ」  吸血鬼にとって血は特別な意味を持つ。  今のお前なら分かるだろう? とニヤついた顔で言われた。  確かに分かる。  分かってしまった。  吸血鬼にとって、吸血鬼の血そのものが特別なんだ。  なんて言うんだろう……?  誇りを持っているっていうのに近い気がする。  それにもっと強制力が加わったような感じ。  自分の意志では抗えないほどの誇り。  それゆえに、主従の儀式は絶対。  吸血鬼なら、その抗えない誇りゆえにその主従を引き離すことが出来ない。 「でも、私達が一緒にいることを反対しているのはハンター側もだって……」  嘉輪の話を思い出しながら言う。  確か、特別になってしまった私に永人はふさわしくないとかなんとか……。 「そっちは大丈夫だろ。反対って言ってもどちらかというとって感じみてぇだったし? 全員が反対なわけじゃないみてぇだからなぁ」  上層部の決定は大体多数決だから大丈夫だろうとのことだった。 「……なるほど」  私が納得の声を上げると、同時に永人の肩から田神先生の手が離れる。  チラッと見ると、ショックなのか愕然とした様子だった。  田神先生は私達を引き離したかった方なんだね……。  少し悲しく思いながら視線を永人に戻す。  にやけた、満足そうな顔。  さっきまでの悲しそうな諦めきった微笑みは欠片もない。
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