閑話 密やかな誓い

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 あのまま聖良が冷たくなっていたら、俺は慟哭し心を凍らせただろう。  その後は復讐に生きるか、感情を持たない人形になり果てるか……。  何にせよ最後は聖良の後を追う事しか考えなくなっただろう。  本当に、生きていてくれて良かった。  聖良は、その存在そのものが俺の生きる理由なんだと実感したのだから。  だからこそ、今度こそ守りきる。  聖良は俺の全てなんだから。  そういう意味でも、従者という立場は丁度良いのかもしれないと思う。  血の契約により、無意識の上でも主を守ろうとするのが従者だ。  今度こそどんなミスもしたくない。  契約は、聖良を守るための補助にもなる。    それに、契約がある以上聖良の側にいても表立って文句を言うやつはいないだろうしな。  純血種の血を受けて俺より強くなってしまった聖良だが、今後もあいつを狙う吸血鬼がいないとは限らない。  聖良自身をというより、あいつが持つ力が欲しいだけの連中。  そんな奴らに渡してたまるか。  聖良は――俺の“唯一”は、俺だけの女だ。  誰にも渡さない。  あの田神とかいう教師にも、月原家にも……死神にさえも。  俺と聖良を引き離そうとするすべてのものから守ろう。  (ただ)一人の存在を主として契約した日の夜、一人になった部屋で俺は密かにそんな誓いを立てた……。
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