6.吸血鬼になりました*愛良の儀式

1/8
180人が本棚に入れています
本棚に追加
/495ページ

6.吸血鬼になりました*愛良の儀式

 真っ赤なルビーの様な結晶に、愛良が軽く指を切って血を付ける。  すると結晶は形を変えて、棒状になったかと思うと愛良の左手首に巻きついた。  ピッタリと肌にくっ付く様に巻き付いたそれは、継ぎ目も無く愛良の手首にはまる。  その不思議な光景を私は軽い驚きを持って見ていた。 「……愛良、これでお前は俺から絶対に離れられない」  零士が愛良を見つめ、嬉しそうに俺様な雰囲気の笑みを見せる。  私から見たらただのムカつく笑顔だけど、愛良にとっては嬉しいものだったらしい。 「望むところです。零士先輩も、私から離れちゃ嫌ですよ?」  零士に対抗するようにニッと笑った愛良を零士は思わずという風に抱きしめた。 「……なぁ?」  愛良の血婚の儀式を見届ける私に隣から声が掛けられる。 「見届けたならもういいだろ? 他人のイチャイチャなんか見せつけられたくねぇんだけど」 「……それはまあ、私も複雑な心境になるけれど……」  私の髪の毛をひと房取ってもてあそぶ永人は、口角を上げてその髪に軽く唇を落とす。 「他人の見るくらいなら、俺らでイチャつきてぇんだけど?」 「なっ⁉」  とんでもない誘いに私の心臓は大きく跳ねる。  嫌、ではない。  でも、人前でするようなことじゃない。  私は出来る限り平静を装いながら、近づいてきた永人の胸を軽く押した。 「そ、そういうのは二人きりのときにするものでしょ?」 「じゃあ、さっさと二人きりになろうぜ?」  それでも攻めるのをやめない永人は、彼の胸を押した私の手を掴む。  そして髪をいじっていた手を私の肩に回し、どんどん顔を近づけてきた。
/495ページ

最初のコメントを投稿しよう!