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「な、永人……?」
「こんな風にお前に触れるのは俺だけの特権だからなぁ……もっと触れてぇ……」
キスされそうなほどの近さに、ドキドキが止まらなくなる。
黒曜石みたいに黒い瞳が真っ直ぐ私だけを見てくるから、ついそのまま……なんて考えまで過ぎる。
でも、周りに人がいることを忘れることも出来なくて……。
「~っ! 永人、ストップ!」
つい、“命令”してしまった。
その瞬間ピタリと止まる永人。
数秒後「チッ」と舌打ちが聞こえた。
「こういうとき主従の誓いは厄介だなぁ……」
面倒くせぇ、と呟く。
「ふ、二人きりのときって言ったでしょう?」
そんな永人にドキドキする胸を押さえてもう一度告げる。
永人は不満そうにしながらも「だったら」とまた私の髪をいじり始める。
「なおさら早く二人きりになろうぜ?」
誘う言葉はまだ少し甘くて、また私の心臓は早鐘を打った。
「ん! ううん!」
そんな私達の雰囲気をぶち壊すかのように大きく唸る声が聞こえる。
それにハッとする私と愛良。
見ると、唸り声の主は眉間にくっきりとしわを寄せた田神先生だった。
うっ……気まずい……。
「とにかく、これで愛良さんの血婚の儀式は終了だ。零士との確かな繋がりが出来た以上、今後愛良さんを無理に手に入れようとする輩はいなくなるはずだ」
淡々と“先生”の顔でそう告げた田神先生は、私に視線を移してスッとその眼差しから感情を消す。
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