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「……だが、聖良さんの場合は少々特殊なので何とも言えない。岸と引き離すことは出来なくなったが、それだけとも言える」
「それは、どういう意味ですか?」
「“花嫁”に純血種の血が入ったんだ。前例のない事態のため、特定の相手がいたとしても狙ってくる輩はいるかもしれないということだ」
「……」
冷たくも見えるその眼差しに、田神先生もまた私を諦めていないと言っているようで苦しくなってくる。
主従の儀式をしたことで離れ離れにされそうだった永人と私は一緒にいることが出来るようになった。
吸血鬼としての血に対する誇り。
その血に刻まれた抗いようのない誇りゆえに、吸血鬼は血で結ばれた私達を引き離すことができない。
本来なら血の契約で結ばれた相手との邪魔をすることもないけれど、私の場合は特殊だから何とも言えないということらしい。
「……それでも、私は永人を選びました。それに、永人は私の“唯一”でもあります。永人以外には考えられないです……」
以前から私に好意を寄せてくれていた田神先生にそれを言うのは少し躊躇われたけれど、この気持ちだけは揺らぐことはないからハッキリ告げた。
「……聖良さんはそうでも、周りが認められないということだ」
「っ!」
それでも冷たく言い放つ田神先生に胸が苦しくなる。
その認められない周りの人の中には、田神先生も入っているということだろうか。
私に好意を寄せてくれていた人だから、そう簡単には認められないってこと?
でも、今の田神先生を見ると……。
彼の冷たいほどの眼差しは本当に好意から来るものなんだろうかと疑問に思う。
以前は確かにあった優しい想いが今は欠片も感じられない。
それが悲しくて、苦しくて……少し怖かった。
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