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「おいおい、何勝手に人の女睨んでんだよ」
そんな田神先生の眼差しから守るように、永人が私の前に立つ。
普段は俺様というか、強引というか……そんな感じの永人だけれど、こんな風にさりげなく私を守ろうとしてくれる。
そんなところに私はまた不覚にもキュンとしてしまうんだ。
「お前の女? 少なくともそれを俺は認めていない。認めざるを得ないと思っているのは、お前が彼女の従者で引き離すことが出来ないということだけだ」
「はっ! 言ってろ。“唯一”同士を引き離そうとする愚か者の戯言だ」
「なんだと……?」
「ちょっ、永人?」
守ろうとしてくれるのは嬉しいけれど、そこで挑発するようなことを言うのはいかがなものか。
気色ばむ二人をどう止めるべきか迷う。
でも、その助けはまた別の人物がしてくれる。
「ストップ! 愛良ちゃんの血婚の儀式成功の場ですよ? おめでたい場でケンカなんかしないでください」
同じく愛良の血婚の儀式を見守ってくれていた嘉輪が止めに入ってくれる。
本当に彼女は頼りになる。
嘉輪が男だったら絶対惚れてたんじゃないかって今でもたまに思うくらい。
「そ、そうですよ! 愛良におめでとうって言って祝うところなんじゃないですか?」
瑠希ちゃんも嘉輪に続くように二人を――というか、主に田神先生を非難する。
グッと言葉に詰まる田神先生だったけれど、そこは大人と言うべきか。
非をすぐに認めて謝罪を口にする。
「……そうだな、すまなかった」
田神先生が引いたことで、永人もフンッと鼻を鳴らして口を閉じた。
「愛良さん、零士。血婚の儀式成功おめでとう。これで君達を引き裂くものはいなくなるだろう」
儀式を取り仕切っている田神先生がそう祝辞を述べたことで、場は解散となった。
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