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「それに弱小バレー部だってのはお姉ちゃんも知ってるでしょう? むしろ一勝出来た方が奇跡だよ」
「あはは、確かに」
ため息を吐く愛良に笑いながら同意すると、彼女は突然ハッとして凄い勢いで前方を見た。
何事かと私も視線の先を追う。
家と学校の間にある商店街を通り過ぎ、住宅街に差し掛かるというところ。
民家の塀に寄りかかっていた男がこちらを鋭い目で見ていた。
スペードシルエットの黒髪で、この辺りでは見ない少し変わった学ランを着ている。
まだ衣替え前なのに、暑くないんだろうか?
制服の上からでも分かるほどスタイルが良く、スラリと身長も高い。
顔の作りはイケメンというより美形。
女装しても似合うんじゃないかと思う。
睨んでいるんじゃないかと思うほど鋭い眼光を向けられていなければ、カッコイイと見惚れてしまうほどだ。
思わずそこで足を止めてしまった私達に向かって、彼はこちらに歩いて来る。
そして目の前に来た男は、右手を愛良に伸ばし手首を掴む。
「お前だな……。一緒に来てもらう」
「は?」
と、声を出したのは私。
愛良は目を見開いて固まっていた。
そんな愛良の手首を男は強引に引っ張り、言葉通り何処かへ連れて行こうとする。
「え? ちょっと! 愛良を何処に連れて行くつもりよ!?」
愛良を引っ張る腕に掴みかかり叫ぶ。
ダメだ。
こいつカッコイイけど、ヤバイ奴だ!
瞬時にそう判断した私は愛良から男の手を引っぺがした。
男が本気で力を込めていれば難しかったかもしれないけれど、邪魔が入るとは思っていなかったらしい彼は丁度その一瞬力を緩めていたみたい。
愛良を背中に守る様にして男から距離を取る。
相対した男は私をあからさまに邪魔そうな目で見ていた。
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