6.吸血鬼になりました*愛良の儀式

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「仲良くなんかしてねぇけど……でも、嫉妬してくれたのか? 愛良」  一気に甘い雰囲気になる彼らに、私達を含め他の人達も声を掛けられなくなる。  っこの、零士のくせに!  なんて思いながら他人事のように二人を見ていたけれど、私も大して変わらないんだとすぐに思い知らされた。 「お前もだぜぇ? 聖良?」  ねちっこくすら聞こえるその声に思わずゾクリと体が震える。 「まさか俺に嫉妬させて煽ってるんじゃねぇだろうなぁ?」 「え? 煽ってなんか……」  どうして口ゲンカしただけで永人を煽ることになるのか全く分からない。  ただ、非常にマズイ状況に陥っていることだけは分かった。  私を抱き込む腕にグッと力が込められ、耳の近くにあった彼の唇が触れる。 「んっ」  耳が弱い私は、そんなわずかな刺激にさえ声を漏らしてしまう。 「煽ってないって言うなら、俺が嫉妬しそうになることすんなよ」  熱がこもっているような吐息にまた声が漏れそうになってグッと押し込める。  そうしてから、何とか言葉を紡ぎ出した。 「嫉妬させるような事、した覚え無いんだけれど……」  でも、その言葉は永人には逆効果だったらしい。  へぇ……と意地の悪さをにじませた声が耳をかすめる。  マズイ、と思ったときには遅かった。 「分からねぇってんなら、分かるまで教え込まねぇとなぁ?」 「え? ちょっ、永人ストッ――ひゃあ⁉」  止まる様命じる前に、耳のふちを舐められて変な声が出てしまう。 「ほ、ホントにやめっ――はぅっ」  そして今度ははむっと食べられてしまった。  このままじゃ本当にマズイ!  人前でこんなこと……。  恥ずかしすぎて、何とかしなきゃと周囲に意識を向ける。  そうして嘉輪と目が合った。  でも、彼女の私を見る目は何故だかとても生暖かいもので……。
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