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「か、嘉輪?」
助けを求める前に名を呼んでみると、どうしてかニッコリ笑顔を向けられた。
「“唯一”と仲が良いのは良いことだわ。邪魔者は退散するから、ごゆっくり」
「え?」
「ほら、鏡も行くわよ」
と、嘉輪はもう一人残っている瑠希ちゃんにも声を掛ける。
「え? 良いんですか? 聖良先輩、助けを求めてる気がしますけど……」
瑠希ちゃんは私の思いを汲み取ってそう言ってくれる。
けれど、嘉輪はニッコリ笑顔のまま続けた。
「“唯一”同士のイチャイチャを邪魔することほど馬鹿らしいことはないわ」
達観したような眼差しと口調には何とも言えない説得力があった。
何だろう。
この手の対応は慣れているといった感じ。
「それに聖良なら本当に嫌なときは命令して止められるでしょう?」
「……それもそうですね。愛良の方は……大丈夫そうですし」
嘉輪の説明に納得した瑠希ちゃんはチラリと愛良の方も見てそう言った。
愛良と零士は完全に二人の世界に入ってしまっている。
零士は永人みたいに強引な触れ方をしていないせいもあってか、あちらはひたすら甘い雰囲気が漂っていた。
「というわけだから……ごゆっくり~」
「じゃあ、失礼しますね~」
そうして私の救助を求める視線はスルーされ、二人は部屋を出て行ってしまった。
「さ、邪魔者もいなくなったしこれでゆっくり教え込ませてやれるなぁ?」
耳元で、楽し気な声が聞こえる。
「え? でもほら、愛良達もいるし……」
「……あいつらはこっちのこと全く気にしてねぇみてぇだけど?」
「……」
その通り過ぎて反論できない。
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