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ダークブルーのスーツを着こなした長身の男性。
さっきの男より背は高いかもしれない。
黒の前髪はアップにしていて、ボリュームが出るように毛が流れているけれど後頭部は短く切られていてすっきりしている。
整った顔に丸みを帯びた四角形の黒縁メガネを付けていた。
愛良を見ると知らない、と言うように頭を横にブンブン振っている。
男性は見た感じ、清潔そうな好感の持てる雰囲気だ。
でも知らない男性が私達を待ち構える様に家の前にいたら、警戒するに決まってる。
ただでさえさっき愛良が知らない男に連れ去られそうになったばかりだ。
引き返して交番にでも行って相談してみるべきか。
それか一応話だけでも聞いてみるべきか……。
どうするべきか悩んでいると、男性がこちらに気付いた。
「初めまして。香月 愛良さんだね? 待っていたよ」
男性の目的は愛良の様だ。
ますますさっきの男と重なってしまう。
でも、男らしく紳士的な笑みを向けられてついつい警戒心が緩む。
とりあえず話くらいは聞いてもいいかもしれないと思って数歩近付いた――が、そこで足を止める。
何故なら、男性の更に向こうからさっきの男が近付いて来るのが見えたから。
男は男性の隣に立つと、私達――正確には愛良を見て「こっちから来てたのか」と呟いていた。
男性は男を見ても“誰だこいつ”みたいな顔はしなかった。
むしろ困ったように息を吐く。
その様子は明らかに二人は知り合いだと物語っていた。
どうしよう。
やっぱり交番に行くべき?
そう思って愛良の手を握る。
すると愛良も同じように思っていたのか、手を握り返された。
じゃあまた走るよ?
と視線を向けると、コクンと頷く愛良。
そして二人で踵を返したとき、男が声を上げた。
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