学園への勧誘

1/10
前へ
/495ページ
次へ

学園への勧誘

 取りあえず私達はお母さんに言われた通り家に入った。  男二人も邪魔することはなかったし。  って言うか寧ろ付いて来たんだけど……。  でもお母さんに呼ばれた田神さんはともかく、何でこの男まで家の中入ってくるわけ?  田神さんと知り合いなのは何となくわかるけど、コイツ必要なの?  いや、いらない。私が決めた。  さっさと出ていけ、シッシッ!  とやりたいところだけれど、そんなことをしたらお母さんに叱られそうだ。  仕方ないから黙っておく。  家に入ってすぐにお母さんに言われて、二階の部屋に鞄を置いてきてからリビングに集まった。 「そちらが一緒にいらしたと言う学生さんですか?」  とっておきのティーカップで紅茶を振舞いながら、お母さんが田神さんに聞く。  田神さんは人好きする笑みを浮かべて「はい」と答えると連れの男に自己紹介するようにうながした。 「高等部二年の赤井(あかい) 零士(れいじ)と言います」  笑顔は見せなかったけれど、礼儀正しく姿勢を正して男は名乗った。  ついさっき誘拐未遂をした男と同一人物には見えなくて軽く驚いたけれど、私には寧ろ猫を被っているように見えた。  胡散臭い男。  ってか、同い年だったんだ。 「まあ、礼儀正しいのね。さすが城山(きやま)学園の生徒さんだわ」  ほほほ、と少し照れた様に笑うお母さん。  私はお母さんの言葉に耳を疑った。  愛良も驚いたのか目を瞬かせている。  城山学園?  って確か、山の上にある中高一貫校だよね?  何でも選ばれた特別なエリートしか入れない学校で、どんなに優秀な子が希望しても落とされるとか言う……。  とにかく、私達には全く縁のない学園だ。  でも、そっか。  だから見たことのない制服着てたんだ。
/495ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加