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百合子が曲を聴きながら呟く。
「ハワイ止まりだったからな」
「あれはあれで楽しかったわ」
四年の間に色んな事があり、些細な事で歓び、つまらない事で喧嘩をした。これが別れの頃合いだったのだろうか。
また、暫く音楽だけが流れていた。
「あの、」
「あのさ」
二人同時に言葉を発した。
「ばか、何も言えなくなるじゃん」
「ごめん」
百合子は哲哉を小突いた。
「ごめん、じゃないでしょ」
視線が合った。
「哲っちゃんは、哲っちゃんで居なよ」
「なんだよそれ」
「そういう事だよ」
ふわり、と百合子が哲哉を抱きよせた。
百合子の香りが鼻腔に満ちた。
それが、百合子と居た最後の日だった。
(終)
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