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「哲っちゃんさん、今日は何を?」
「あ、うん。ロゼのスパークリグ・ワインって何かありますか。……お手頃なとこで」
大将が選んでくれたのはフランスのロゼ・スパークリングだった。人気がある割に値段も確かに手頃だった。
「頼まれたんすか?いいっすねぇ」
楽しそうにレジを通している大将に、次からどんな顔で会おうかと哲哉は考えていた。
玄関で百合子が待っていた。
「遅い。お腹減っちゃったよ」
「まる鈴さんまで行けって言ったじゃん」
哲哉が言うと、百合子は踵を返して「まったく、ごめんって言えないひとなんだから」
と奥へ歩いて言った。そうかもしれなかった。とは言え、百合子もまた、一度言い出したら聞かない所があるのも確かだった。何とか折り合いをつけて、四年間を過ごしてきた。この先もずっとこうなのだと、勝手に哲哉が思っていたのだ。
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