4 別れの時

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4 別れの時

 モーガン・フィッシャーは終わり、今はアントニオ・カルロス・ジョビンの『ストーン・フラワー』が流れていた。これは百合子が好きでよく聴いていたものだ。  リビングに射す陽射しも傾き、ボサノバが心地よい時間帯になっていた。  窓の傍のソファに二人並んで座り、窓から見える公園で遊んでいる子供たちを眺めた。 「まる鈴の大将、元気だった?」  百合子がキャッチボールをしている子供を見て哲哉に訊いた。 「暫く行ってないっけ?帽子が変わったくらいかな、メジャー・リーグのに」 「宗旨替え?セ・リーグじゃなかったっけ」  百合子が笑った。 「流行には敏感なんじゃない、あぁ見えて」 「あぁ見えてって」  また百合子が笑う。こんな時間をあと少し、過ごしていたいと哲哉は思う。  別れが先か、出会いが先か。  先ほど百合子が小さく言った言葉を、哲哉は反芻する。 「ブラジル行きたいな」
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