Prologue

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Prologue

生まれながら障害があることで、生きづらい人はいっぱいいる、でも私は恵まれている。 五体満足ではないものの最低、最小限のことは自分でできる。 見た目がおかしいことはわかっている。 だからって何でもかんでも重度の障碍者と同じというわけではない。 利き手があることで、何でもできると思っている。何でもやれると思っていた。 実際できないこともあるが、そこはこのあほな明るさで何とかカバーするしかない。 私は赤ちゃんの時、事件か事故かわからないが、左の手首から先を無くした。 まるで腫れものでも見るように、みんな一歩離れてみる。電車では席を譲られるというか、前に立つとすっと席を離れるといったほうがいいかな。 案外これ、本人より母親やその子を連れて歩く家族親戚の方が辛い思いをするんだ、結構こっちのほうが大変なのだ。 今さらではあるが知ったのはつい最近だ。 うちはおばあちゃんがそうだ、うつ状態にまでなってしまったんだもん、だから私を連れて出歩くことはある時から、無くなってしまった。 黙っていればいいのにやたらと絡みたがるやつ?これは男が多い、訳が分からん。女はそれにさらに輪をかけて絡んでくる。そういう時は、ああこんな男の子はモテるんだと思い、女の子は大体その男の子が好き。そんなのに巻き込まれるのはまっぴらごめん、だからそこから存在を消すことを覚えた。 すごいでしょ。 いじめの標的にされるのはわかりきっているけど、同情や、本当にそんなの関係ない子もなかにはいる。そんな子は案外お友達になりそう、な、関係にある程度なって行く。 でもね、案外そういう子の方が次のターゲットにされて、離れていくパターンは多いんだよ。誰も悪くないのにね、なんで見た目やみんなと違うことをするといじめてくるんだろうバカみたい。 でもそんな奴らには何も言わない、疲れるもん、別にあんたと一生暮らしていくわけじゃないんだからほっとけって感じ。 学校だよ?勉強しに来てるのに、何でつるまなきゃいけないのかさ、わかんない、変なの? わかろうと思わないけどさ。 まあグループだなんだ、で、集団行動をさせようとするからそんな半端物は蚊帳の外なんだけど。 それでも突っかかってくる奴は、ガキだと思うようにしていた。 ガキより赤ちゃんよね、よちよち、どうちまちたか?って心の中でおもっている。 ふん! 大人たちは何のためにか、わからないけれど、お爺ちゃんに”大変ですねー”とか、”ご苦労わかりますー”とか、腰をかがめていっている。へんなの? 何が大変なの?私がいること?苦労がわかる?んー、まあ、お金はねえ、その家の収入を知っているのなら、いえるんだろうけどさ……よお、わからん。 服を買いに行けば、冷たい目で見られる。こっちは普通の人間じゃと言ってやりたいが、そこは大人対応ってとこで知らん顔で堂々買い物をしてやる。 こんな時、スッと自然に手伝ってくれる人はできる人だと思う。 あまり深入りはしないけど、うわべの付き合いはしてもいいかなって思うよね。 こんな場所でもお婆ちゃんには”お孫さんですか―”なんて甘い声で近づいてくる奴に、お婆ちゃんは耐えられなかったんだけどさ。 まあそれもこの年にならばわかるというもので。本当にお世辞抜きで心配してくれるなんて言うのは一人か二人いりゃいいというのが結論だわな。 厄介払いしたくて、さっさと死ね、なんて小声で言ってくる大人はいっぱい見て来た。 高校は中学の先生が決めてくれたところを受けた。まあこの先生もその一人だったかもしれないが私みたいのがいなくなれば清々したといったところだろう。 だいぶいろんな先生に、本当にいいんですか?普通の高校でいいんですかぁ?なんて、あんたおかしいんじゃない?って言いたかったけど、そこも我慢だ。 『子供のこと思ってます』って言う教師、そうよ、思うだけは誰にもわかんないんだもん、どう思ってるかなんて誰にもわからない。 だから、こっちも言う、『私も先生のこと思ってまーす』ってね。 卒業したら関係ないし。 ベーダ!
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