第一章 出会った声に萌―  第一話

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電車を降りるとおはようのあいさつがあちらこちらから聞こえてき始めた。 校舎は駅から近い、だいぶ見えてき始めた。ここは、とある町にあるとある公立高校であーる。 一応関東、東京に近い場所だと言っておこう。 みんなが吸い込まれるように校舎へと入っていく。 パンと投げ捨てた上履きを履き、靴を入れる。 初めて目にする後輩は目を点にしている。 すると、まるでシャキーンという噴き出しが出るがごとく左手を見せるのだ。 「おお」 という声もあれば、あれ何?という冷たい目で通り過ぎるのが、まあほとんどだわな。 まるでピーターパンのフック船長のような手を挙げてみるのだ。 今日は“おお”って言われたちょっと嬉しい そして!とある教室へ入っていくのである! おはよう! スキップしながら入ってくと……。 向かい合わせで座る女子。片手をついて顎を乗せ、元気ねーと言いながらこっちを見ている。 そこに顔を入れ込むように挨拶。 グッドモーニング、チュッ! おでこを叩かれ。 後ろからはたかれ。 頭の上にできたお団子が崩れた。 「あー」 「ごめん、直す」 直せ―と頭を出す。 はい、はいと言いながら櫛を出してちゃんとしてくれる。 ムフフフ。 「なによー」 「今日はおにぎりゲット!」 「まったく」 ねえ、ねえ、見た昨日のと言ってるそばから、口に手を当てられしゃべるなの態度。 「もむ!」(もう!) 「あのね、あんたみたいに、毎晩アニメづけじゃないの、わかってる?受験。 あんた就職なのよ?」 「わあっえうおー」(わかってるよー) やっと口から手が外れた。 高3にして、アニメ、マンガ好き。 目の前を何かが通り過ぎた。 「アニメージュ!」 急に振り返ったので、また崩れた。 「もう、前むく!」 「王子様だ!」 「はいはい、あとでね」 「一瞬でわかるか、これが王子ねー、ただの叔父さんじゃん」 「そういうな、アニメの王子様はこのお方がほとんどじゃ、ズが高い!」 まったくとため息。 男性声優に超―憧れていて、叔父さんでもいい、あの声は私の物なんて思っている、ボイオタ、ボイスオタク、それもイケボイと呼ばれる、イケメンボイスオタクなのである。 『大事にするから』 ああ、耳元で言われたい! はいはい 『離さない、君は誰にもやらない!』 後ろから抱きしめられてささやかれたい―っ! と抱き着いた。 「いい抱かなくて」と手を叩かれた。 『きみがすきだー!』 右手を上げ斜め上を見る。 「まるで、宝塚だね」 「だめだこりゃ」 はいできたと肩を叩かれた。 鏡を出してくれた。 「いい女だよねー」誰も言ってくれないから自画自賛。 はい、はい。 はいどうぞ―。と雑誌が出て来た。 ははー!ありがとうござりまする!雑誌の表紙をなぞった。 ん? 「ムー」 ほっぺを膨らまして<`ヘ´>プンプン 「どうした?」 「どうかした?」 表紙を指さした。 「ああ、実写化、この頃手当たり次第だな」 「バカにするなって言いたいよね」 原作マンガを見た私にとっては、せっかくいろんなことを妄想できるのに、それが動くアニメになった時の喜びようは、もう感激そのもので、それにビターッとあった声優さんが来た時にゃあもう超、萌えです。 「ああ、もうぶち壊し―!」 あんただけよねと言われた。 「だって、せっかく、あの声優さんで、妄想しているのに、何で、こんなに合いもしねー俳優かぶれにさせるのかわかんない」 口を押えられた。あんまり大きい声に出すなと、その俳優を好きな子だっているのよと言われ、うなずくと手が離れた。 「まあそれは一理あるな、今の俳優なんて、自分を表現できないんじゃないかなと思うよ、だって、原作の漫画も、アニメも、それを表現するから評価もらうのに、何でもかんでも実写化する意味がわかんないよ」 「監督も脚本家もだけどな」 「友よ、そう思っているだけでわたシャー感謝だわ」 「あんたに感謝されてもねえ」 えっちゃんもノンちゃんもそんな私の中では大の大親友達である、バカなこの私の話もちゃんと聞いてくれて、うれしくて。 「うれしくて?そこに出しているのは何かな?」 「うん宿題、ここわかんなかった」 「エライね、わかんないなりにもやって来るんだから」 「褒めて、褒めて」 はい、はい、広げろよ。 教えてもらっているうちに授業が始まった。 マンガっていいよな、でも私は見る専門。書きたくてもかけない、違うな、センスがないんだ、美術は全然だめだし。 もうかける人なんか神だよ。 だから読む、見る専門。 お爺ちゃんは大学の先生だったんだ、家には本がいっぱい。だからかな、漫画本でもほしいと言えば買ってもらえた。 みんなよりも恵まれている? んー、今は電子書籍もあるでしょ、本当はお金払ってもみたいなと思うんだけど、頑固なおじいちゃんは、そんなものはいらんと言われてからずっと口を聞いていないような気がする。 この手の先があったのなら私の人生どうなっていたのかなー? 鐘が鳴った。 へへへ、きいてなかったー。 一時間ぼーっと考え事と妄想していた。テヘッ。
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