第二話

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第二話

隅田川の花火大会ではないものの、この辺も大きな花火大会はある、そして、その日は、彼のマンションの屋上で、住民と花火を見るのだ。 長年ここに住んでいても夜は家から出ることはなかった、音は聞いていたけど、花火って人がいっぱいいるイメージしかなくて、でも、去年は楽しかった。 初めての花火大会はめちゃくちゃ楽しかった。 今年もそれをするのだ。 このマンションのオーナーは社長、でも管理組合は、個人企業には貸せないと言ってきた。 誰が言ったかわからないが。だったら、住民の皆さんも一緒に混ざればいいんじゃないんですか?その一声がきっかけで、マンションの住民参加のお祭りとなったのだ。 花火を見るのは屋上だから、子供から目を離せないし、飲食禁止だし、集会場を借りて、慰労会と称して飲食ができるようにしませんかという案が通り、借りるために話をしに行った。 「さて、マンションの組合はよし、道具は、それなりに用意できるから」 「こんにちは」 「こんにちは、おねえちゃん、お祭りするの?」 「うん、今年は雨が降らなきゃいいね」 「テルテル坊主いっぱい作るね」 「お願いね、奥様もお願いします」 なんて頭を下げ子供たちは何をしているのと集まってきていた。 主会場に飾りつけをするのだ、殺風景だからお祭りの提灯とか、少しずつ準備していたのを運んでいるんだ。 去年、浴衣を着させてもらった、初めてで、下駄だと足が痛いからと、サンダルもかわいいものを買った。 お古だけど、かわいいものをいただいたんだ。 ただ、花火が終わりそうになるころから雨が降り出しちゃって、まあ天気も悪かったんだけどね。それでも何とかやりきったんだ。 びしょ、びしょになって動き回った。 でもあの日を思い出すと体が熱くなる。 「亜矢こっちにこい!」 社長に呼ばれてそばに行くと、これを着ろとはっぴを渡されたんだ。 えー?こんなの着たくないと言ったら、窓に体を向けられた。 窓ガラスに映った自分を見て恥ずかしくなった。 体の線が、濡れたせいではっきりわかる、下着の線とかが浮いてるんだ。 社長の背中に隠れるようにしてすぐに着た。 みんなが帰り始め、社員たちも早くかえした。 雨は強くなっていく。 集会所のほうも明日にでも片付けましょうということになり、鍵が閉められ、みんなが慌てて帰っていく。 私も帰らないと。 社長に手をつかまれ、引っ張られた。 抱かれた腕の中、あったかいー。 「風邪ひく、ふろに入らないと」 「あの、帰ります」 そのまま雨の中に二人出ていた、手を引っ張る社長、それに引きずられるように社長の部屋に入った。 ドアを閉める、向かい合う二人。 抱きしめられ、キスをした。 もうそのあとは恥ずかしくて言えない―、お風呂も一緒に入っちゃったし―。 「お姉ちゃん、大丈夫?」 「え?ああ、ごめんね、明日楽しみだね」 こんな時に反芻するなんて、馬鹿。
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