第二話

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時計を見て、人が動き出した、そろそろ終わりなのかな。 「なあ、階段コムから行こうぜ」 「先に行こうよ」 俺たちは先に階段を折りはじめた、俺たちと同年代の子たちがおりはじめた。 「いいね、浴衣」 「むらむらしちゃう」 「やべ―」 ぎゃははは 「すげーなにこれ」 「IT a party!」 音楽が鳴り、すごい人だ、明らかに、今上から降りてきた人たちじゃないのがわかる。 「亜矢ちゃ~ん」「早いねー」 「肉、肉!」「信ちゃん、食券」「かったもん!」 「はえーな」「社長お邪魔してまーす」「もう肉か?」「いい席取らなきゃ」 「はい、はい、食いすぎるなよ」「はーい、いこうぜ」 外でバーベキューが出来る、肉や野菜はセットで買える。もちろん食券で。 始めて、こんな風に騒ぐのも学校の外じゃなかった。 大人たちからは、ダンスを教えてもらい、おばちゃんたちと踊った、楽しかった。 お祭りも知らないから、夜店はめちゃくちゃ楽しかった。 よかった、楽しそうで。 お願いと来たときはどうしたんだろうと思ったけど、遊ぶお金が欲しかったのよね、無駄使い、これ以上はあげないよと二千円渡したけど、うまく使ったかな? 衛生面から引き渡しは集会場の中、焼くのは外。住民は各々、昨日から準備をしている人たちもいる。私たちはレンタル会社、この会社も取引会社、そこに頼んで、席を二十ほど作ってもらった、ビニルシートの上で、寝転がってはしゃいでいる小さな子たちを見るのもうれしい。早い人はもう五時ごろから食べ始めている人たちもいる。だから私たちはここから離れられないのだ。 「ビール、ありますか?」 「はい、生ですか?」 「生がいいです」 「現金ですか?食券があればください」 「はい、お待ち」 「社、社長!」 「驚かなくてもいいじゃない?」 「驚くでしょ、いいんですか?」 「おう、いっぱい食って飲んでけ!」 「はい、ごちそうさまです」 「よかったね盛況で」 「明日の片づけが大変だけどな」 「平気よ、去年もみんなが手伝ってくれたんですもの」 「そうだな」 「すまんの、肉はいらん、なんかあるか?」 「はい、あちらに、お寿司のコーナーがありますので、いかがですか?」 「ばあさん、すしじゃと」 「いいですね、いただきましょうか」 「せっかくの、券ですからね、いっぱい食べて行ってくださいね」 こっちも、ちゃんとしたお寿司屋さんが握ってくれている、それに、御老人でも楽しんでもらえるようにしている。 マンションだって、こんなにぎやかなこと好きな人もいれば嫌いな人もいる、だから、各家庭に入れたチラシには、食券がついていて、それで好きなものが買えるようになっている、迷惑料というところだ。 社長には、慰安旅行とかない代わりに、楽しんでもらえばいいと、こっちは、ホスト役でいいのだからと言って、みんなの所へ行かせた、ビールやジュースをついで回るだけでいいんだもの。明日から連休です、頑張れと背中を押した。 「お姉ちゃん、お肉、ください」 「はいどうぞ、券をください」 「はい」 「ばいばい」 「ばいばい」 お、なんか場にそぐわない人が来たぞ。 スーツ姿、会社の連中は今日だけは社長命令で、ラフな格好をしてきている、女子や、男性も浴衣を持ってきて会社で着替えて来た子達もいる。だから目につく。 誰だろう? メガネを押し上げて、ぐるりと見ている。 あ、典君だ、まさかあの人が叔父さん?でも話に聞くより若い感じ。私の知っているネジネジの人よりだいぶ若いけどな。まあ忠典さんもそうだから不思議じゃないけど。 腕を引っ張って、あ、大貴ちゃん達も引っ張って何処行くの? 「亜矢さーん、セット追加―」 「ねえさっきの人は?」 「さあ、典の親戚とかって言ってたぜ」 「あそう、じゃあ、これと、後お酒もお願いできる」 「今日の肉最高!」 「そう、まだあるからね」 「はーい」 亜矢さんと言ってきたのは、弁護士の戸田先生とスタッフの方々。 「どうぞごゆっくり楽しんでいってくださいね、先生ちょっと」 彼は何者だと聞いた。 「あー、彼は警戒しなくていい、忠典君のお兄さんだ、本当のね、あの家族はいろいろと大変でね」 彼は母親が違うと言っていましたけど? まあいろいろ複雑でね、でも彼の父親は北条義典、君が出会った正義さんのお父さんに当たる方なんだ。ねじネジの人のお父さん? 「え?それじゃあ、彼は、息子じゃなくて」 「ご兄弟になるんだ、そして、母親はいとこになる方でね。まあだからね、いろいろと大変でね」 何?それじゃあ、彼は、近親相姦で生まれた子? それで、典君と、今あそこにいる方は、本当の兄弟?典君は母親が違うと言っていた。 「そう、彼は正義さんと母親は、正信君の父親の愛人」 正信って? えっと、ああそう、君に奇形児とののっしった男。 「ハア?何それ!」 「そう思うよね、忠典の母親も典道君の母親も、もうこの世にはいない、自殺してね。これ以上の辱めは嫌だと残して、でもね、彼、典道君が一番変わっただろ?あんな笑顔、初めて見たよ」 「だからあんなに北条家にむき出しでいかるんだ」 「そういう事だ、まあ、彼が話したくないのは、何かあるんだ、待ってやってくれないかな」 「待てません、だって、私と彼、十歳離れているんですよ、聞きだしてやる、今日は勘弁しますけど」 「ハハハ、亜矢ちゃんには負けるよ」 「先生も生飲みますか?」 「いいね、いただこうか」 九時を過ぎたころ、音楽が消され、店も締め始めた。たった数時間のお祭りは終わった。
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