第三話

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「ここ?」 「うん、こんにちはー、亜矢です~どなたかいらっしゃいますか?」 玄関が開いていた、今日は日曜日、叔父さんか叔母さんがいるはず。 「はーい」 奥から声がした。 「あら―、亜矢ちゃん」 「お久しぶりです」 「おじいちゃんたちは?」 「はい何とか、叔父さんいらっしゃいますか?」 「ええ、ねえ、その人は?」 「ああ、私結婚したんです、主人です」 「どうも」 バタバタと叔母さんは走って行った。 「亜矢―!」 「叔父さんお久しぶりです」 「お、お前結婚!」 「はい、しました、主人です、私、井上になったんです」 おじいちゃんからの手紙を渡した。 「ここじゃ何だから、上がって」 「失礼します」 「します」 この家は、挨拶だけしかしない二軒隣の家の反対の方、隣と言っても距離があって、おじいちゃんが唯一人付き合いを許してくれていた隣人で私にとって奥さんは料理の師匠でもあるのだ。 部屋に案内され、いつ結婚したんだ、おじいちゃんたちは知っているのかとまあポンポンとおばさんに言われ、彼もうんざりとしていた頃、叔父さんが部屋に入ってきた。 「これな、そうか、だからかな」 「あけてもいいですか?」 「いいよ」 古い白い封筒、中には、なんか固いものが入っている。 カチャ、カチャと音を立ててごろっと出てきた物は、白い布にくるまった貴金属? 布は袋になってシミが茶色くなってついている。 「これ、手袋だ?」 「手袋?」 「うん、赤ちゃんの時につけるやつ、こんな小さかったんだな、叔父さんこのアクセサリーは?」 「引越しする時な、お前が来なかったら息子ににやってくれって言われてたけどな、来ると思ってたよ」 「叔父さん、これ男物の時計」 「いいんだ、これな、お前の母さんのもんだ」 「お母さんの?」 「うん、死んだとき、部屋に入った時な、爺ちゃんに持っていてくれって言われてさ」 ありがとうと頭を下げた、この辺にいるならまた来いと言われた。 出て来たな、時計、それを戸田に写真を送った。 「おじいちゃんやおばあちゃんのものどうしよう」 「昔は売って金に換えたからな、今じゃどれくらいの価値があるかわからないけど、デザインが古いのなら作り変える手はあるぞ」 「そうなんだ」 「にやけてる」 「にやけてない、ただアクセサリーなんて持ってないし、そもそもつけられないもんね」 「だったら子供にでもやればいいじゃねか、この先出来たら取っといたら?」 「そうか、そうだよね」 次は、電車に乗って、一時間。 「この辺かな」 「どこかで聞く?」 「人も歩いてないな」 住宅街、駅前の派出所で聞いてきた、この辺なんだけど……。 あったこっちだという、一軒家は、おじいちゃん家と同じ感じがした。 呼び鈴は押してもどこかで鳴っているのだろうかという感じがあった。 一応、手土産は用意していたモノの留守ならば、どうしようかと思っていた。 はい、と優しい女性の声がした。 おじいちゃんの名前を言い、その孫だと話すと少々お待ちくださいと言われた。 扉が開くと年配の女性が出てきた。 どうぞこちらへと言われ中に案内させられた、玄関のそばには、車いす用のアプローチがあった。
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